日本は自然野菜が豊富な国?


shojin ryori w1200h676進料理の定義は知りませんが,日本で,またはヨーロッパの日本食レストランでヴェジテリアン料理を注文したら,鰹節の出汁が使われていた,などという話をときどき耳にします。

かく言う私も,日本食(らしい)料理をふるまったとき,ヴェジテリアンの人もいたので野菜だけにしたのですが,鶏がらスープを少し入れてお叱りを受けたことがありました。それでも,ちょびっと混ぜただけなのにどうしてダメなのかな,と首をかしげていると,隣にいた欧州育ちの日本人から「ヴェジテリアンの人だったら量や形にかかわらず肉魚は全く受け入れられないのは当然」と言われ,目が開いた気がしました。

その後,ヨーロッパで菜食主義者にたびたび会い,こんなにも多いのかという認識に変わりました。日本にいるときは,好き嫌いをせず(母親に)出される何でも全部食べろ,といわれて育ったせいだけでもないとは思いますが。

ヨーロッパでは肉類の消費量が多く,肉類,特に赤みの牛肉は健康にもよくない,環境保全の意味でも肉の消費は減らすべきと叫ばれながら,少なくともドイツでは30年前と比較して10%程度しか肉の消費は減っていないそうです。
正確な分析は専門家に仰がないと分かりませんが,個人的にはこの10%に惑わされたと思っています。
おそらく,肉好きの一部,おそらくはドイツ国民,特に成人男性の半分以上は,肉を食べ続けているだけではなく,回数も増えています。
彼らは,「肉がなければ何もない。じゃぁ何を食べろというの?」と真面目顔で言います。
つまり,毎日毎食,肉を欠かせない人たちの数は変わらなくても,一人当たりの消費量が増えているので,ヴェジテリアンが相当数増えているにもかかわらず,肉の全体的な消費量はあまり変わらないのではないでしょうか。

いずれにせよ,もともとヨーロッパに多かったヴェジテリアンは増え続け,最近は圧倒的に多くの人たちがヴィーガンになっています。
そして,ご存知のように,ヴィーガンの人たちは,魚貝・肉類だけではなく,鶏卵や乳製品も一切取りません。
ヴィーガンが一時的なブームに終わらないことがはっきりし始めると,食品業界も目を付け,ヴィーガン向けのラベルを多数見かけるようになりました。

対する日本では,もともと菜食主義者は意外と少なかったのではないでしょうか。
だから,認識が薄く,冒頭で述べたように,鰹節を用いた出汁でも菜食主義者に提供できると考えている人たちが多い印象です。

魚介類は肉類よりも身体に良い,というのはヨーロッパでも半ば常識になっていますが,地中海沿岸の国々を除き,魚介類を食するのは非常に限られた人たちです。
生魚を食さないだけではなく,そもそも魚介類は種類どころか,日本と比較すると無いに等しいと考えてもいいほどです。ニシンなど,わずかな魚が酢漬けや燻製として売っているぐらいで,自宅で作るのは非常に珍しい。

話しが少しそれますが,先日,娘の従姉妹が遊びにきたとき,言っていました。

「私は魚は嫌いだから全然食べない。フィッシシュテープヘンは好きだけど・・」

Fischstäbchenとは,魚の白身をつぶして小さな短冊状に形作って,衣をつけて揚げた,ドイツの子供たちの好物のトップ。
ドイツの大人でも,料理が出されると,魚が入っていないか隅々までつついて調べるのに,フィッシュステープヘンは平気で食する人がいるほど,フィッシュは名ばかりで魚と思っていない人が多いのです。

私事ですが,実を言うと,私は困っています。
最初は娘たち,その後,カミさんまでも,数年前からヴィーガンになってしまったのです。

そこで理由を尋ねました。

答え:健康,環境,倫理

倫理というのが,生意気なことをほざくなぁ,と思いましたが,考えて見るとこれら3要素はヨーロッパの若い世代に広がっている共通の価値感ともいえるのです。

前述のように,ヨーロッパでは,魚介類は提供量も愛好家も少ないので,野菜中心,できれば有機野菜を主とした和食のほうが将来性はあると思います。
地味ですが,野菜,有機,茶,ワインなどを好む人たちの方が,肉,コーヒー,ビールやアルコール分の高い酒などを好み,大量の爆食いに喜ぶ人たちよりも教育レベルが高い,という記事もありました。
ドイツでの話しですが,ヨーロッパに共通すると考えていいでしょう。
ミックジャガーですら,日本食レストランに好んで行く理由は,野菜が美味しく調理されているからに違いありません。
(ミックジャガーもポールマッカートニーも菜食主義者)

芸術的レベルの超高級寿司や大きな丼に盛られたこってりラーメンも良いですが,自分たちが住んでいる地域で栽培された身近な野菜を美味しく調理して,質素ながらきれいに出す料理は,和食の得意技でもあると思うのです。

海外における和食レストランの将来と,日本食が与えられる「世界の食」への寄与にもつながることは間違いありません。

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