開店までの必要書類から,ドイツ飲食業の法規まで,知っておきたい和食レストラン起業条件

ドイツで日本食レストランの開業


ドイツの人件費

ドイツを含む西ヨーロッパ諸国の人件費(労働賃金)は日本よりも高いと思われますが,飲食業界の労働条件(賃金・労働時間)はあまりよくありません。
雇用者(使用者)にとっては良いように思われますが,逆にいえば長く働いてくれる良き人材の確保が難しいことにもつながります。
日本のようなボーナス制度はありませんが,任意とは云えクリスマス給付金などを含めると年間給与額は13ヶ月分ほどになるのが一般的です。

ドイツの労働システムと就労形態

大きく分けると,フルタイム(Vollzeit),パートタイム(Teilzeit),ミニジョブ(Minijob),フリーランス。社会保障費の負担額だけではなく,ドイツの長い休暇期間や病欠を埋めるコストなどで,非正規雇用を好む使用者が増えたとはいえ,現在でもフルタイム正規労働者はドイツの全就労人口の6割を占めています。
使用者が負担する社会保障費,休暇,解雇条件をはじめとする就労契約条件はフルタイムとパートタイムは同じです。パートタイムの場合,状況によっては特別規約を定めることが許されていますが,フルタイム正規雇用との違いは基本的には労働時間だけになります。ミニジョブやフリーランス,および日本同様に増えている派遣労働者の場合は異なります。

ミニジョブ(Minijob)

ミニジョブでは使用者は社会保障費の支払い義務がなく,被雇用者も基本的に無税です。ただ,年金は,被雇用者が明示的に「支払わない」旨を使用者に伝えない限り,給与から年金保険の分担金が差し引かれます。
 1週間の労働時間は最大15時間,月給は定給で520ユーロと定められていたミニジョブですが,2024年1月1日からは538ユーロに値上げされると共に,労働時間の制限が廃止されます。
別に長い労働時間が許されるようになったというわけではなく,最低時給賃金に基づいて,使用者と被雇用者との間で新たな契約または話し合いが必要になるということです。

パートタイム(Teilzeit),アルバイト(Studentenjob)

ドイツでパートタイムの仕事をいう場合は,正規に別の職に就いている人が収入を増やすために働くアルバイト就労を指し,労働時間は関係ないので,ときに正規労働者の週40時間を超えることもあります。いわゆる日本語のアルバイトはドイツ語ではジョブ,それで学生アルバイト(学生ジョブ)という言い方が一般的です。学生も休暇時期には週40時間以上働くことができます。
いずれの場合も,無税,および社会保障費の支払い義務もないので,飲食業ではミニジョブ,パート,アルバイトが多いようです。

最低時間給(Mindeststundenlohn)

2024年1月1日から,ドイツの最低賃金は,12,41 ユーロ/時になります。基本的には,パートでも学生アルバイトでも,ワーキングホリデーでも,この最低賃金が適用されます。

正社員を1名雇用した場合のコスト例

職探しをしている多くの人は無期限の正規雇用を求めるので,期限付きの非正規雇用となると簡単に人材が見つからないことは十分に考えられます。
日本食レストランの開業にあたり,通常は少なくとも一人の正規社員を雇用することになると思いますので,給与の内訳および使用者の負担額をある程度想像するために,以下,実例を記します。独身者,既婚者,扶養家族,母子家庭など,納税クラス(Steuerklasse)によって内訳は大きく異なりますので,参考程度にしてください。

 

 

税込み給与

 

3.000,00 €

36.000,00 €

  + 年金保険(Rentenversicehrung: 9,3 %)

 

300,00 €

3.600,00 €

  + 失業保険(Arbeitslosenversicherung: 1,25 %)

 

40,00 €

480,00 €

  + 介護保険(Pflegeversicehrung: 1,52 %)

 

50,00 €

600,00 €

  + 健康保険(Krankenversicherung:  7,3 %)

 

250,00 €

3.000,00 €

  + 分担金

     
 

U1 3,0 %

80,00 €

960,00 €

 

U2 1,0 %

15,00 €

180,00 €

 

U3 0,1 %

2,00 €

24,00 €

       

総額

 

3.737,00 €

44.844,00 €

 

 

U1:病欠が続いた場合などの給与の継続支払い保険分担金
U2:産休・育児などの保険分担金
            (出産予定日の6週間前から出産後8週間まで)
U3:破産・倒産の際の保険分担金
            (倒産手続きまでの給与の支払い)

 

飲食業はピンキリなので一概には言えませんが,職種的にみると,給与は高くなく,労働時間も長い傾向にあるのは日本と変わりありません。
以下,各職種の平均的な月給です。

 ドイツのホテル・飲食業における給与(月給)の目安  男性   女性
 調理人  1.669 €  1.494 €
 レストラン経営専門学校修了者  1.541 €  1.378 €
 レストラン長  2.253 €  2.085 €
 料理長  2.695 €  2.175 €
 ウェイター  1.496 €  1.246 €
 シェフ  2.363 €  2.031 €
 サービス係  1.278 €  1.210 €
 キッチンヘルプ                                                           1.225 €  1.082 €
 ウェイター長  1.868 €  1.666 €
 レストラン・ディレクター  2.972 €  2.591 €
 ガストロノミー専門家                                                         1.622 €  1.496 €
 アシスタント・シェフ  1.468 €  1.217 €
 大型厨房の調理人  1.876 €  1.499 €
 セールスマネージャー                                                          2.687 €  2.316 €

 

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