日本のパン,日本人の好きなパン


toastbread w640う大昔と云える1970年ごろ,東京に住んでいる姉が「ドンクのパンは美味しくて,本当はフランスパンのお店なんだけど食パンもすごく美味しいから」とパンのお土産を持ってきてくれたことがありました。

家族は,とても美味しいと喜んでいましたが,僕はただ,あぁ。

でも確かに,いつもの食パンとは異なる上質は感じられましたが,それだけ。

その後,フランスに在住。当時は今のようにパンも売っている大きなスーパーは1軒もなかったので,パンはパン屋さんでしか買えなかったと思います。

毎日少なくとも1回のパン屋通いが習慣になりました。
余談ですが,une baguette が通じないことが多かったので,仕様が無く,deux baguettes にしてバゲット2本買い続けていたこともありました。

フランスでは食事の内容は関係なく,いつも必ずパンがでてくる。ドイツに住み始めてから,すっかり忘れてしまいました。
当然ながら,フランスではパンを一緒に食べます。お腹を満たすためではなく,なんとなくいつも一緒に食べるのです,ほぼ習慣的に。
だから食卓にパンがないと,何か足りない気がする。そんな感じです。

よく,日本での「ごはん」の位置付けと比較して,同じだという人が多いですが,私は違うと思います。
「ごはん」は主食と呼んでもいいですが,「パン」は主食ではないのです。少なくとも私にとっては。

ドイツに来てからは,いつもあったパンが食卓から消えました。
それでも,多くのドイツ人のパンに対する愛着はタダモノではありません。最近は若干変わりつつありますが・・
また,ドイツには数千種類のパンがあると云う人や記事を目にすることがありますが,ちょっとオーバー。
パンは,麦の種類だけではなく,麦粉の混合の割合や方法,それに焼き方など,細かいバリエーションがいくらでもできるので,試行して商品群に加えるオタク・パン職人がひとりでもいると,それが新商品になってしまうからだと思います。

にもかかわらず,フランスの食卓には欠かせないパンが,ドイツの料理には付いてきません。パンはパンを主とした食事になっていることが習慣づいているからです。
一般的には,朝食と夕食がパン食。昼食は,独立した料理なのでパンは無し,となります。

bread w640それはともかく,そのような経過で,好む好まざるにかかわらず,パンと付き合い続けています。
そしていつも思うことは,日本人が好むパンは,甘く,柔らかい,ということです。
フランスにもドイツにも甘いパンまたはパン菓子はありますが,それらは甘いパンの種類として,はっきりと別に分かれている気がします。

ところが日本のパンは,すべてのパンにほんのりとした甘さを感じ,多少の柔らかさがないと,パンではない,または売れないと決まっているかのようです。
美味しいパン屋さんでは,種類によらず美味しいので,文句のつけようなどはないのですが,甘っぽさゼロのパンを好む人にとっては選択肢はありません。
黒パンでも白パンでもいいのですが,ここで考えられることは,フランスやドイツの一般のパン屋さんのように,甘っぽさを全く含まないパンを売って商売を行うことは至難の業ではなかろうかということです。

パン職人になるためにヨーロッパに留学していた日本人を何人も知っていたのに,質問を投げかけなかったことが今悔やまれます。
日本に一時帰国した折,本場のドイツパンで有名らしい店で購入したパンには,パンの素人の私でさえがっくり。嫁さんは「え!これがドイツのパン?」。
(クリスマス時期に食する甘い)シュトレンでさえ,甘くてまずいわけではないけれど,シュトレン独特の味がないので,ドイツのディスカウンターのフェイク・シュトレンという感じでした。

少なくとも,ドイツでパン職人になるためにゲゼレぐらいまで学んだのであれば,本物の基本的な多種のパンを焼けるはずです。
ドイツで学んだ本物のパンは日本人には受けないので,日本人の好みに沿って変えていることも十分考えられます。
ドンクのような,知名度も高く,顧客も多いパン屋であれば,本場と同じパンを望む顧客からフランス風・ドイツ風のパンを好む一般の日本人の好みにまで合わせた商品ラインナップを揃えているかもしれません。
私は,ドンクは見たことも行ったこともないので知る由はありませんが・・・

ドイツに長年住んでいる日本人でさえ,日本のパン,特に食パンを好む人たちは多いようです。
言いたかったのは,良し悪しではなく,日本では,ヨーロッパのパンを提供することも購入することも極めて難しいであろうと察しています,ということです。
やはり米食民族の血が染み込んでいるのか,専門家に聞きたいところです。

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